- 生活保護を希望しているけど借金がある。調査に影響でそうで不安・・・
- 借金あるけど生活保護になったら無くなるの?
生活保護を受けようと考えている人の中には、すでに借金が膨らみ、返済できなくなっているという人も少なくなくありません。すでに借金があると生活保護は受給できないでしょうか?もしくは、生活保護費を借金返済にあてることはできるのでしょうか?今回は生活保護と借金についてまとめます。
生活保護とは
病気やケガなどにより働けなくなったり、働き手がいなくなったりして生活に困ることがあります。生活保護は、そのようなときに自分たちの能力や資産などを活用し、あらゆる手を尽くし、それでもなお生活ができない場合に、国民の生存権の保障を規定した法律(憲法第25条の理念)に基づいて最低限度の生活を保障するとともに、自分で自分の生活を支えられるよう支援することを目的とした制度です。
生活保護の支給額は「最低生活費」とされ、世帯の食費・衣類などの生活費、家賃などの住宅費、義務教育に必要な教育費、医療費を合わせたものであり、個人ごとの加算により計算されます。
生活保護申請時の借金は調査でバレる?受給に影響も?
借金があったら生活保護は申請できないのか?受給できないのか?と心配している方は多いですが、結論として借金があっても生活保護は受給できます。
- 資産:預貯金や土地など、お金にかわる資産がない。
- 能力:働いてもお金が足りず、最低限度の生活ができない。
- あらゆるもの:こども手当など生活保護以外の公的サービスを利用しても生活できない。
これらが審査項目となり、これらを活用しても生活が困窮する場合は、生活保護の支給対象となります。
借金に関する項目はなく、借金があると生活保護の申請はできないという決まりはありません。申請後は調査を受けることになりますが、生活保護の受給可否の判断について、借金の有無は影響しません。通帳提出や資産の調査が入り、借金をバレずに隠し通すには無理があるので、むしろ隠さずしっかり伝えておきましょう。
生活保護を受給できても借金は踏み倒せない
借金があっても生活保護は受けられますが、借金が無くなって踏み倒せる訳ではありません。借金には返済する義務があるため、生活保護を受給していようとも借金は無くなりません。
「仕方ない。生活保護費から返済にまわすか・・」と考え方もいるかと思いますが、これは大きな過ちとなります。生活保護費は最低限の生活を扶助するためであり、借金返済のためのお金ではありません。生活保護で支給される扶助も決まっています。
生活扶助 | 衣食や光熱水費など、日常生活に必要な費用 |
住宅扶助 | 家賃、地代または住宅の修理費などの費用 |
教育扶助 | 義務教育に必要な学用品代、給食費などの費用 |
医療扶助 | 病気やケガなどをした場合の医療に必要な費用 |
介護扶助 | 介護に必要な費用 |
出産扶助 | 出産に必要な費用 |
生業扶助 | 就職するために必要な費用、高等学校等で就学するための費用 |
葬祭扶助 | 葬儀に必要な費用 |
これらの扶助に含まれない借金返済のために生活保護費をあてることは「不正受給」に該当し、生活保護の打ち切りにつながります。「では生活保護になったら借金はどうする?放置しておいていい?」と疑問を持つ方もいるかと思いますので、次の項目でまとめます。
生活保護費で借金は返済できない。では放置しても取り立てはこない?
生活保護費で借金を返済できないことは前項目で解説しました。では、借金を放置していたらどうなるか?ここで解説します。
生活保護受給では借金は消滅しない
残念ながら、生活保護を受給できた後に借金を放置し続ければ利息がどんどん積みあがり、最終的には裁判所から訴状が届き、資産の差し押さえにつながります。生活保護費の差し押さえは禁止されているので大丈夫だとしても、生活保護の扶助として認められている持ち物が資産と判断されてしまい、差し押さえ対象となる可能性があります。
では借金返済はどうしたらよいか?借金返済のために新たに借金する方法を考える方もいると思いますが、これも大きな過ちにつながります。仮にカードローン・キャッシングの審査を通過することができたとしても、借金=収入とみなされ、生活保護費が減額となってしまいます。生活保護費が減額となり、借金の利息だけ膨らむので新たな借入はできないと考えておきましょう。
生活保護を受給して借金がある場合、いずれかの選択肢を判断する必要があります。
- 生活保護を抜け出せるよう自立し、得た収入から借金を返済していく。
- 生活保護を受給しつつ債務整理する。
一時的な病気やケガの方であれば、自立支援を受けつつ生活保護から抜け出し、得た収入から借金を返済できると思います。しかし生活保護受給者の方には、今後将来的に働くのが困難な方もいらっしゃるでしょう。そのような方は債務整理し、借金問題を解消する必要があります。
生活保護申請のタイミングで借金があることを相談すると、自治体側から自己破産(債務整理)を勧められるケースもあるようです。生活保護は、最低限度の生活を保障するとともに、自分で自分の生活を支えられるよう支援することを目的とした制度ですが、借金を抱えたまま新たなスタートを切るのは難しいでしょう。原則として、生活保護を受給する前に債務整理にて借金問題を解消しておくことが必要と考えられます。
債務整理の方法について

債務整理は以下の3つの方法があります。
任意整理
支払う利息のカットや、返済期間を延長してもらえるよう、弁護士を通じて貸金業者と交渉する方法です。借金総額を減らすことができるほか、月々の負担を減らして返済目処が立ちやすくなります。借金が無くなる訳ではないため、仮に生活保護受給者が任意整理を受けても借金問題は解消しないため、すでに生活保護を受給している場合は選択できない方法となります。
生活保護申請前であり、返済スケジュール調整で借金完済が見込める方はご検討ください。デメリットとしては、金融事故として個人信用情報機関に記録され、5年間程度はブラックリスト入りとなり、クレジットカード発行や新たな借入ができなくなります。
個人再生
借金減額や返済方法変更を行う方法です。金額次第ですが、最大で9割程度減額できる可能性もあります。任意整理と比べ、大幅に減額できる点がメリットとなります。デメリットは任意整理・自己破産と同じく事故情報として記録される点ですが、自己破産と違って資産処分はありません。
また、再生計画が必要となり、手続きが複雑かつ時間を要し、弁護士等の専門家アドバイスが必要になってきますので、その点もデメリットとなります。
自己破産
自己破産は、借金が全額免除になる手続きのことです。借金があり、すでに生活保護を受給している場合は、自己破産にて借金問題を解消します。デメリットとしては、信用情報機関に金融事故として記録されることになりますが、自己破産の場合は最長10年程度記録が残ります。10年間はクレジットカード発行や借入ができないと諦めましょう。また、生活保護申請時で資産は無くなっていると想定されますが、破産管財人判断によって「高価な財産」と処分される持ち物が出てくるかもしれません。
生活保護受給者の方は、自己破産にかかる費用が免除されます(法テラスが建て替え)。生活保護申請時に、福祉事務所に相談しましょう。
生活保護の申請について
- 福祉事務所へ「生活保護申請書」を提出
- 面談/訪問(申請日~数日後)※住まいの状態確認など
- 調査・決定(申請日から14日以内)
資産状況等についての調査が行われ、生活保護を開始するかどうかの決定がなされます。開始した場合、申請日にさかのぼって生活保護費が支給されます。やむを得ない事情があるときには14日以上かかる場合がありますが、長くとも30日以内に決定することが法的に定められています。
申請が却下された場合には、理由が書かれた書類を渡されます。審査結果に不服があれば「審査請求」をすることが可能です。却下された場合、支援団体に相談することも検討ください。
- 生活保護申請書
- 資産申告書
- 収入、無収入申告書
- 一時金申請書※必要の場合
また、申請に必要でありませんが、以下の書類についても持参すれば手続きがスムーズに進むと思います。
- 賃貸借契約書
- 通帳
- 印鑑
- 本人確認書類(運転免許証・健康保険証など)
- 収入がわかるもの(給与明細・年金証書など)
提出書類はインターネットでダウンロード可能ですが、相談も兼ねて福祉事務所で受けとりましょう。生活保護申請や債務整理など、はじめての経験が多いと思います。抱えこまず福祉事務所で相談し、新たなスタートを切ることをオススメします。
まとめ
借金があっても生活保護の調査には影響しません。しかし、生活保護費を受給できたとしても、生活保護費から借金を返済することは不正受給となり、生活保護打ち切りにつながるリスクがあります。今後将来的に生活保護を抜け出し、自力で借金返済することが難しいと判断される場合、債務整理が必要になります。生活保護費の受給開始後からでも手続きできますが、生活保護申請前に自治体より勧められるケースもあるようです。生活保護申請時に借金があることも伝えておきましょう。