- 毎月奨学金の返還がヤバい。返さないといけないのは理解しているけれど。。
- 奨学金って絶対返さないといけないお金ではないよね?正直なところ毎月キツい。
大学に進学する家庭の約50%が利用している奨学金。「あしながおじさん」的な印象もあり、教育ローンなど金融機関からの借入とは、どこか違う印象があります。毎月の返還金額は小さくないため生活を圧迫することも。奨学金を払えず、返還を滞納した場合どうなるのでしょうか?滞納した場合のリスク、利用できる制度をまとめます。
奨学金返還を滞納するリスク。保証人に催促も

毎月の返還金額として小さくない奨学金。毎月の支払いとして負担となっている人も多いでしょう。では奨学金返還を滞納すると、どのようなリスクがあるのでしょうか?ここで解説します。
奨学金の返還を滞納すると延滞金も支払う必要あり
奨学金の返還滞納を続けると延滞金を支払う必要が生じ、滞納している期間によって年率が厳しくなります。第一種(無利子)で最大5%、第二種(有利子)だと最大10%の延滞金が発生します。
3ヶ月以上の滞納でブラックリストに
あまり知られていませんが、奨学金の返還を3ヶ月以上滞納することで個人信用情報機関に金融事故として記録され、いわゆる金融ブラックリストになってしまうことに。ブラックリストの期間は、クレジットカードが作れなくなったり、教育ローン・住宅ローンなどローンが組めなくなります。
一度ブラックリストになると、滞納していた金額を支払っても解消されず、5年経過するまで解消されません。
9ヶ月以上の長期間滞納で弁護士から催促状
長期間滞納すると、日本学生支援機構の顧問弁護士名義で期限付きの督促状が届きます。催促状の支払い期限内に返還できない場合、訴訟に発展することも。
裁判所の判決次第では、財産の差し押さえ処分となり、給料や車などの所有物が差し押さえされます。給料の差し押さえとなると、職場にも知られてしまうことになります。また、訴訟に伴う裁判費用なども延滞者負担として上乗せされてしまいます。
保証人にも大迷惑
有料の保証制度を使わない限り保証人が必要であるため、親や親族が保証人となっている人が多いでしょう。奨学金の返還を滞納した場合、保証人も返還の責任を負うことになります。保証人の給料や財産差し押さえまで発展してしまうと、保証人が勤めている会社やまわりの人にも知られてしまい、社会的信用を失うことにもつながりかねません。
奨学金を払えない人は多い?
実際に奨学金を払えない人はどの程度いるのでしょうか?
日本学生支援機構の統計によると、返還の必要がある人のうち、第一種奨学金(無利子)は5.4%、第二種奨学金(有利子)では7.5%の人が返還を滞納しているとのことです。
第一種・第二種それぞれ借りていて、それぞれ返還を滞納している人もいるかもしれませんが、90%程度の人は返還していることがわかります。
奨学金を払えない場合の対処方法
職を失った、家族の介護が必要、地震に被災した、などどうしても返還が難しくなるときがあると思います。返還ができないと判断した場合、返還を放っておくことはせず、利用できる制度を活用しましょう。条件を満たした場合、支払い期間を調整できる制度が用意されています。
減額返還制度
毎月の返還金額を2分の1もしくは3分の1に減額できます。月々の返還金額が少なくなりますが、返還する総額が減るわけではありません。1回の届け出につき、12ヶ月分適用されます。
- 災害、傷病、その他経済的理由により奨学金の返還が困難であること
- 届け出及び審査の時点で延滞していないこと
- 口座振替加入者であること
- 月賦返還であること
- 個人信用情報の取扱いに関する同意書を提出していること
経済的な理由となる、収入の目安は以下のとおりです。
給与所得者:年間収入金額325万円以下
給与所得以外の所得:年間所得金額(必要経費等控除後)225万円以下
※本人の被扶養者について1人につき38万円を収入・所得金額から控除して審査
返還制限猶予制度
災害、傷病、経済困難、失業など理由により返還が困難となった場合、通算で最大10年までは返還期限の猶予を願い出ることができます。適用すべきか審査があり、審査により承認された期間については返還の必要がありませんが、あくまで一定期間返還期限を延期する制度であり、返還すべき元金や利子が免除されるものではありません。
ケガや病気、被災、入学準備中、失業、新卒、大学校在学や経済困難な場合に申請でき、すでに延滞してしまっている人でも利用できる可能性はあります。猶予適用期間中は延滞が加算されることはありませんが、申請時点での延滞金は免除されず、猶予期間終了後に支払う必要があります。
返還免除制度
契約者本人が死亡した場合や、精神・身体障害により労働能力を喪失した合に利用できる制度のことです。
減額返還・返還期限猶予の利用状況
日本学生支援機構の調査では、令和元年の減額返還制度の利用者数は3万人、返還期限猶予制度の利用者数が15万人という調査結果となっています。年度は異なりますが、平成30年度のアンケート調査では、制度を利用した人の主な理由は「契約者本人の低所得」となります。
日本学生支援機構アンケート調査(複数回答)
引用:日本学生支援機構アンケート調査
理由 | 平成30年度 |
本人の低所得 | 64.0% |
延滞額の増加 | 39.9% |
本人の借入金の返済 | 30.6% |
本人が失業中(無職) | 24.3% |
親の経済困難(本人が親へ経済援助をしており支出が多い) | 22.8% |
親の経済困難 (本人の親が返還する約束) | 22.6% |
家族の病気療養 | 16.1% |
本人が病気療養中 | 11.4% |
減額返還・返還期限猶予の審査に落ちた。どうすればよい?
減額返還・返還期限猶予の制度が利用できなかった場合、自分でお金を用意するしかありません。返還滞納が長引くと金融ブラックになってしまいますので、3ヶ月以内に対応を進めましょう。
家族にお金を借りる
両親や家族が保証人になっているケースが多いと思います。奨学金を返還できない理由や返還目途をきちんと話し、助けを求めてください。
収入を増やす・支出を減らす
収入が少ないことが要因の場合、働く時間を増やして収入を増やす必要があります。また、生活用品や習い事代など削減したくないと思いますが、このまま滞納が続くと金融ブラックになることを想像し、支出を削減してください。
金融機関から借入する
一時的に銀行や消費者金融から借入する方法もあります。金利が高めなので計画的に利用する必要がありますが、初回であれば30日間利息無料サービスを提供している会社もあります。「来月賞与が入れば支払える」など、一時的にお金が必要な場合にうまく活用してみてください。
自己破産した場合、奨学金の返還義務はどうなる?
金融機関からの借入などあらゆる方法を利用しても、奨学金を払えない人もいるのではないでしょうか。金融機関からの借入も多いし、奨学金も払えない・・・もう自己破産しよう、と考えてしまう人も少なくないかもしれません。
自己破産した場合、奨学金はどうなるのでしょうか?自己破産して免責が認められた場合、契約者本人(債務者)は返還義務が無くなります。しかし、保証人・連帯保証人へ支払い義務が移ってしまいます。奨学金といえども借金となりますので、金融機関からの借入などと同じように、本人が払えない場合は保証人が払う必要があります。
奨学金を借りた本人が自己破産をしても返還の責任は保証人に移るため、奨学金返還の責任から逃れることはできず、かえって保証人になってくれた家族や身内の人に多大な迷惑をかけてしまうことになります。減額返還制度や返還期限猶予制度を紹介しましたが、これらが利用できなくともまずは相談センターに連絡してみましょう。
日本学生支援機構 奨学金相談センター 電話:0570‐666‐301(ナビダイヤル) 月曜~金曜:9時00分~20時00分(土日祝日・年末年始を除く)
まとめ
奨学金を滞納すると、金融ブラックリストになってしまったり、最終的には給与・財産差し押さえまで発展するリスクがあります。家族や金融機関からお金を借りて、滞納せず返還しましょう。収入面や仕事の状況、個人の体調などの事情により返還が難しい場合、減額・期限猶予を申請することも可能です。あらゆる方法を利用しても払えず自己破産した場合、保証人が支払う必要があります。一人で抱え込まず、奨学金相談センターに連絡してみましょう。